| 16年8月某日、下高井戸のインド料理店MILANのマトンカレーランチセット。行こうと思っていた食堂が閉まっていたために止むを得ずこちらによったのだが、以外に満足感があってよかった。サラダは日本の御飯茶碗に盛られて出てきた。 |
残念ながら私は実はインドには行ったことがない。そのために、「本物のインド料理」というものがどういうものなのか、正しく理解しているという強固な自信のようなものはない。
そんな私でも、シカゴにいたときには現地にいるインド人の多くの友人たちからヒンズー最大のお祭りであるDiwaliのディナーに招待してもらったりしたし(自慢ではないがインド人の友達だけは結構いる)、シンガポールにも多くのインド系移民がいるため彼らが食べるためのインド料理店に連れて行ってもらったりした。
したがって、オーセンティックなインド料理というものがいったいどういうものなのか、全く分かっていないというわけではないはずだ。そもそも、彼らの文化そのものも、そしてその文化の一つである料理も、インドの各地域によってかなり違うものであるらしいので、「本物のインド料理」などということに拘ることもあまり意味のあることではないのではないかとさえ思う。
そんな私でも、日本のいわゆる街のインド料理店(日本のインド料理店件数は確実に増えているらしい)で食べるインド料理は、おそらくは正統なインド料理からはかなりかけ離れたものであるだろう、という直感を持つことになるのには理由がある。
それはすなわち、基本的にどのインド料理店も判で押したように同じ料理、同じサービスが出てくるからである。
さっきも言ったように、インド料理とは多様な文化を反映して多様なものであるはずだから、本来であればこのように均質にはならないはずだ。きっと日本人のプロデューサーだか、ブローカーだか、フードコンサルタントだかというような人が、それを仕切っているのだろうとか、ちょっと胡散臭くも感じてしまう。
ほとんどの店がだいたい以下のパターンでサービスを提供している。
- インド人のみで運営されている:3人、4人の複数人数で、女性を含む場合もあるが、そのうちの一人が日本語を話せる。日本人のウェイターなどは一人もいない。
- カレーとナンまたはライス:カレーはいろいろな種類があるが、我々の想像の範囲を超えるようなものはない。チキン、ビーフ、マトン、サグ(ほうれん草)、魚などなど。辛さが選べるケースも非常に多い。そして必ずナンかライスどちらかを選ばせるのだが、今までインド料理屋に入ってナンではなくライスを頼んだ人を見たことがない。ナンはお代わりが可能な場合もある。
- セットの飲み物の選択肢にラッシーが必ず入っている。
- サラダ:小さいサラダが小鉢に盛られているが、たいていは千切りキャベツと葉物のサラダで例外なくサザンアイランドドレッシングがかかっている。
- ナマステ:最近はあまり聞かなくなった(むしろタイ料理店の「こっぷんかー」のほうが気になる)
- ボリウッドBollywood:例外なくスクリーンがあり、例のビデオが流れている。
これだけ見ても、「確かにこれが本場インドで食べられている食事でなどあろう筈がない」と、常識的な人間なら思うであろう。
しかし不思議なのは、日本人というのは今までこと食べるものに関しては本場志向、本物志向を貫いてきており、例えば中華料理やフレンチなども日本人の口に合わせて作ったものなどよりも現地のものそのものをありがたがる傾向が強かったはずなのに、なんでことインドに関してはこうなってしまっているのだろうか、という点である。特に理由はわからない。
しかし、例えばアメリカに日本の寿司職人が行ってSushi restaurantなんかを開いたりするときに、アボガド・ロールだかカリフォルニア・ロールだかを作るときには「ケッ、こんなゲテモノ、喜んで食ってやがるぜ」みたいなことを思うに違いなく、そして、厨房の奥のインド人たちも我々を見て間違いなく同じことを思っているだろうなと想像すると、複雑な気分になるのである。
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