Sunday, December 30, 2012

職業としての獣医師―日米比較;Veterinarian as an occupation - US&Japan (Jp)

獣医師になるには熱意が必要だ。獣医学科(学部)入ってくる学生はその熱意を持ってやってくる。なぜなら、獣医学科というのは非常に狭き門であり、入試を突破するためには人一倍勉強をしなければならないからである。この状況は日米でも変わらない。米国労働統計局によれば、2010年に獣医大学に入学を希望した者のうち入学を許可された者は半分に満たなかった[1]。だが日本における状況はさらに厳しい。2009年には、獣医学科入学者一人当たりの志願者数は15.6人であった[2]。もちろん教育システムが違う(*)のでそのまま比較はできないが、獣医師というのは日米を問わず人気の職種なのである。

獣医師は給料も悪くない。アメリカの獣医師の平均年収は$82,040であったが[3]、日本ではおよそ620万円であり[4]、ほとんど差は見られなかった。

登録されている獣医師の数は2010年の時点でアメリカが61,400人[5]、日本は35,379人[6]であった。これは、人口一人当たりの獣医師の数は日本の方がアメリカを上回っていることを示しているが(アメリカはおよそ人口5,000人あたり獣医師一人、日本は3,600人あたり一人)、アメリカでは臨床に携わる獣医師は獣医師全体の80%にも及ぶのに対し[7]、日本では43%程度しか臨床獣医師にならないので[8]、人口一人当たりの臨床獣医師の数はそれほど変わらないということになる。

飼われているペットの頭数には大きな差が見られる。日本ではおよそ1,200万頭のイヌと1,000万頭のネコがペットとして飼育されているが、[9], アメリカ人は7,800万頭のイヌと8,600万頭のネコとを生活の伴侶としている[10]

人獣共通感染症、つまり人と動物とが共有する感染症に対する専門性というのは、世界中の獣医師共通の存在理由の一つである。最も重要な人獣共通感染症の一つが狂犬病である。日本は狂犬病清浄国であり、日本の全ての獣医師共通のミッションは狂犬病の病原体を国内に持ち込ませないことである。日本は狂犬病清浄国ではないので、感染予防施策は極めて重要である。易感染動物対策やワクチン対策が功を奏し、一世紀前には年間100人程度であったヒトの狂犬病による死亡者数も、現在は年間二人若しくは三人程度にまで押さえ込まれている[11]

これまでの議論を以下の表にまとめた。

日本
米国
獣医大学入学の競争率
15.6倍 (2009)
2倍以上 (2010)
獣医師の平均年収 (2010)
620万円
$82,040
登録獣医師数 (2010)
35,379
61,400
獣医師一人当たり人口
3,600
5,000
獣医師の臨床従事者の割合 (2010)
80%
43%
ペットとしてのイヌの頭数 (2011)
11,936,000
78,200,000
ペットとしてのネコの頭数 (2011)
9,606,000
86,400,000

*: アメリカでは獣医科は高等専門教育過程であり、Bachelor's Degreeを取得してからでないと入学が難しい。高校を卒業してからUnder Graduateを4年程度こなし、それから4年間かけて獣医学教育をうけるというのが普通のパスである。日本では高校を卒業してからいきなり6年間の獣医学科若しくは学部に直接入学するので、いわゆる教養課程も含めてそこで教わることになるのだが、アメリカではいわゆるLiberal ArtsはUnder Graduateで学ぶものであって、獣医科は高度に専門化されている。

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